BIG MAGIC 「夢中になる」ことからはじめよう。
エリザベス・ギルバート・著 神奈川夏子・訳(ディスカバートゥエンティワン)
わたしは、昨年まで約3年の間、某大手出版社で書籍のレビューを執筆していた。契約が終了し、この10か月間は、本当にのんびりとした、原稿の締め切りを持たない優雅な日々に大満足だった。ライター時代、平日は会社員であるから、週に5本の様々なブックレビューは、出勤前、朝5時~7時にだいたいのあらすじを書く。仕事に出た後は原本を読み込む事に空き時間を使い、週末、一気に5本のブックレビューを仕上げていた。
そろそろ、次なる執筆サイクルを持とうと、この夏休みを返上して、独自のブログやブックレビューを軸に置くWordpressオーソリティサイトの構築を始めたばかり。
新しい仕事は、今度は自分で作ると決めたから、もう受注先云々のやりとりや単価交渉も、契約期間や契約そのものの必要がいらない。自分で執筆ペースやサイクルを決めて発信型のサイトを準備している最中。
で、腕がにぶらないように、紹介したい良本が見つかったので、ここにレビューしてみよう。(全3回予定)
著者本人は、読者のためではなく「自分自身のために書いた」と本書の中で強調している。
著者のエリザベス・ギルバートは、アメリカの小説家。
代表作『食べて、祈って、恋をして』は、1200万部という大ベストセラーを記録した。
同作品は映画化され、ジュリア・ロバーツが主演を務めた。
著者はTEDに2回登壇している。こちらの再生回数は、なんと1600万回に上るという。というのが周辺情報。
さて、書籍の内容だが、まず、「アイデア」は生命体である!という観点。
著者が語る「BIG MAGIC」とは何だろう?
それは「地球にはアイデアも棲んでいる」ということにまつわる様々な奇跡のことだと理解ができる。
地球上には、動物や植物、バクテリア、そしてウイルスなどが 棲息している。しかし、それだけではなく、地球にはアイデアも棲んでいるのだ。アイデアは、肉体のない、エネルギーを持つ生命体だと考えられる。 私たち人間からは完全に切り離された存在だけれど、やり取りすることはできるのだと。まるで一個の生命体だと言わんばかり。
この「アイデア」は、本書の中で「インスピレーション」や「創造性」と言い換えられることもある(「創造性」は、人とインスピレーションの間に存在する結びつきであるとも表現される)いかに、スピリチュアル系?と思うが、もう少し原本の抜粋をする。
エネルギーを持つ生命体「アイデア」には切望していることがある。それは、誰かによって自分を形(作品)にしてもらうことだ。アイデアの持つ資質を誰か優秀な書き手に具現化して欲しがっているのだと言い切っている。
そしてアイデアは、ある日唐突に誰かの元にやってくる。普通は、アイデアがやってきても他のことをしていて気がつかない。もしくは、気がついても「そんなの自分の手には負えない」とお断りしてしまう。
しかし、アイデアと戯れることを決意したとき、創造は始まる。 まるで禁じられた恋のように、熱烈に。
何となく、わかる気がするのよ。実際にわたしの元にやってきた「アイデア」は、信じられないけど、リンダ・グラットン教授の「ライフシフト」~人生100年時代の仕事術~という内容と類似していた。
わたしが3年前に上梓した書籍のキーワードは「女性が一生働く」というコンセプトで、働く女性の指南書になるよ!絶対に需要があると、編集者のお墨付きで出版させて頂いた。今でもポロポロと売れていて嬉しい。電子書籍だから在庫も持たない気軽さで、ライター仕事の名刺代わりとして書籍の存在価値を発揮している。
このリンダ教授とのシンクロニシティ感は、わたしだけが持つものかもしれないが、あえて言うならば、わたしは自分の感覚に大いなる自信と希望を見いだせた体験だった。その後、このライフシフトは世界的に大ヒットしたでしょ。でも、わたしも至近的感覚で一冊書いていたからなんだかとても親しみがあり嬉しかったのよね。
しかし、こういった経験がある場合、「自分だって!あの人より先に出していれば・・・」とか思いがちだろう。しかし、BIG MAGIC というアイデアが欲しているのは、アイデアの早期具現性であって、スピードが勝負だというのだ。
えっちら、おっちら、のんびりやっていては、誰か別の作家の手に落ちていくのだそう。だから、アイデアが降臨したら、一気に書いてすぐに行動するのがふさわしいやり方だと。キモは「誰かがもう書いているかも」であっても、自分へのアイデアの降臨を受け入れて書ききることだ。そうでないと、いつまでも人の仕事に指をくわえて見ている事になるだろう。
『BIG MAGIC』には創作にまつわる著者の体験や、アイデアを作品として完成させるまでの過程などが書かれているが、いわゆる「文章作法」や「創作のノウハウ本」とは趣きがかなり違う。たとえばここも大事なアイデアとの付き合い方が書いてある箇所。
ふいにアイデアが自分のところに現れたら、「これからよろしく」と握手をし、それが作品となる日まで決して喧嘩をせず、見捨てずに、自分の持てる力を最大限に発揮して互いに協力すべきだ。
努力を怠って放っておくと、アイデアは待ち疲れて、どこかに去ってしまうこともあるから要注意。
こんな具合にスピリチュアルっぽい内容も書かれているので、好き嫌いが分かれる本だとは思うが、書くこと、表現することに限らず、「創造的に生きる」ということについて深く考察されているので、クリエイティブでありたいと願う人には、心に響く部分が多いのではないかと感じる。
実践的なアドバイスも沢山載っているから、2回めはさらに具体的にBIG MAGIC を取り入れる方法を書こう。
それじゃあ、また。